TREATMENT

めまいについて

めまい専門外来(神経耳科外来)は、午前の一般外来に来られためまいやふらつきの患者さんのうち、専門的な検査や治療のために通院を必要とする患者さんを対象とした外来です。
めまいやふらつきは一度の診察では正確な診断ができず、経過中に初めて正しい診断にいたることが少なくありません。また、長期にわたり通院が必要な場合もあります。また、治療についても薬の治療から、理学療法、手術治療、リハビリテーションなど多くの選択肢があります。そこで、一般外来を受診された患者さんで医師が必要と判断した場合やめまい・ふらつきについて精密な診断を希望される方を対象に、毎週火曜日午後に専門医師による診療を行っております。

診療日
火曜日:午後1時半から5時

受診の流れ

当院受診には近医からの紹介状が必要です。初診の患者さんはまず午前中の一般外来を受診していただきます。専門外来では次のような流れで診察が行われます。

めまいの問診

めまいの診断に最も大切な物の一つは、患者さんのお話です。めまい専門外来受診に当たってはめまいを起こしたときの状況を細かく伺います。

  • いつ(歩いてるとき、上を向いたとき、横になったとき、仕事中など)
  • どのようなめまいが起こり(ぐるぐる回った、ふわふわした、など)
  • どのように経過したか(1,2分で治まった、数日間グルグル回ったなど)
  • 他の症状(耳鳴り、難聴、頭痛、体のしびれや麻痺、物が二重に見えた、など)

等を詳しくお聴きします。あらかじめ、めまいがおきたときのことを思い出し、記憶をよく整理しておいて下さい。なお当院は教育病院であり、東京医科歯科大学医学部学生がはじめにお話を伺ったり、簡単な診察をさせていただくことがあります。医学教育にご協力をお願いします。

めまいの検査

めまいの検査には以下のものがあります。専門外来受診前に受けていただく場合や、外来中に行う場合、専門外来受診後に追加で予約して後日行う場合があります。検査結果については、外来終了後のカンファレンス(医師による症例検討会)を行い、詳細な検討を行います。

  • 赤外線フレンツェル眼鏡による平衡機能検査
    特殊な眼鏡で、めまいの原因となっている異常眼球運動(眼振など)を診察する検査です。外来にて簡便に行うことができます。
  • 電気眼振検査
    眼の周囲に電極をつけて眼球運動を記録する検査です。水平に動く縞模様を見たり、耳に冷風や冷水を注入しめまいを誘発してその反応を見る検査(カロリックテスト)が含まれます。
  • 簡易カロリックテスト
    外来中に、冷水を耳に注入し赤外線フレンツェル眼鏡で反応を確認する簡易検査を行うことがあります。
  • 重心動揺検査
    特殊な台に立ったまま乗って、体の重心の移動を測定することでめまいの病態や重症度を評価する検査です。
  • 画像検査(CT/MRIなど)
    めまいの原因となりうる耳や脳の異常を確認するためにCTやMRIを行います。当科では特に内リンパ水腫を確認する目的で、造影剤を静脈から注入し4〜5時間後に撮像する内耳造影MRIも行っています。
  • 立位試験(シェロンテスト)
    めまいの中には、血圧の調節障害によって起こるものがあります。この疾患が疑われる場合には、血圧を測定しながら10分間横になって安静にしていただいた後、起立してさらに10分間血圧を測定し、血圧低下や脈拍の上昇を確認する試験を行います。

スタッフ紹介

症状とおもな疾患

良性発作性頭位めまい症

良性発作性頭位めまい症はめまい疾患の中で最もよくみられるものです。寝返りを打ったり、起きあがろうとするときなど、頭の位置を動かしたときにグルグルと目が回ります。通常、めまいは数十秒間以内に消失しますが、1分以上持続するタイプもあります。吐き気・嘔吐を伴うことはありますが、聞こえが悪くなったり、意識や言葉、運動の障害を伴うことはありません。 耳の奥には耳石器と三半規管というバランスを取る器官があります。耳石器に存在する耳石という小さな炭酸カルシウムの結晶が三半規管に入り込み、頭の位置を変えるときに半規管を刺激して、めまいが起こると考えられています。

治療はめまい止めの薬を服用するほか、理学療法が有効です。これは目の動きを観察しながら、頭をゆっくりと回転させて耳石をもとの場所に戻してあげる方法です。数分間でできる治療です。半規管のどこに石があるかによって治療方法が異なるため、当専門外来では適切な診断を行った上で施行しています。 一般的には自然軽快する疾患ですが、時折難治例があり、前庭リハビリテーションや薬物治療、半規管遮断術という手術を施行する場合があります。

メニエール病

典型的には10〜20分から数時間程度の強いめまい発作を反復し、耳閉感、耳鳴り、難聴などの聴覚症状を伴う病気です。内リンパ水腫と呼ばれる内耳の内リンパ液圧の上昇が原因とされています。めまい発作のみを反復する前庭型、聴覚症状のみの蝸牛型も存在します。

治療には生活指導と一般的に利尿剤や漢方薬の内服が多く用いられますが、聴力の急激な増悪に対してはステロイドも使用します。内服治療で軽快せずめまい発作が頻発する症例に対しては、中耳加圧療法やステロイド鼓室内投与、ゲンタマイシン鼓室内投与、内リンパ囊解放術などの手術治療を行っています。それぞれ利点・欠点があり、医学的に最も適切な方針を検討します。

前庭神経炎

数日間続く、グルグル回るめまいを起こす疾患です。感冒が先行することも多く、ウィルス感染が原因のひとつとして考えられています。メニエール病などと異なり難聴や耳鳴を伴うことはありません。回転性めまいが治まったあともふらつきや体を動かしたときのぐらつきを覚える患者さんも多く見られます。治療はまず安静を保つことです。その上でめまい止めの薬や副腎皮質ステロイドホルモンなどを投与致します。

前庭性片頭痛

片頭痛の患者さんで5分から72時間程度までのめまい発作を反復する場合、前庭性片頭痛という疾患である場合があります。特徴的な検査所見はなく、国際学会の診断基準に基づいて臨床症状から診断を行います。疑われる場合には片頭痛に対する薬剤で治療を行います。

持続性知覚性姿勢誘発めまい (Persistent Postural Perceptual Dizziness, PPPD)

近年提唱された新しいめまい疾患の概念です。3か月以上慢性的に続く浮動感、不安定感、回転性ではないめまい症状で、長い間立っていたり歩いたりしたとき、体を動かしたとき、複雑な模様などを見たときに症状がひどくなり、長時間持続することが特徴的です。別のめまい疾患に続発することが多いとされ、平衡障害に対しての適応反応が過剰に起こっている病態とも考えられています。当外来では、この疾患が疑われた場合にはセロトニン再取り込み阻害薬による治療を行っています。

片側前庭機能障害

前庭神経炎や突発性難聴、聴神経腫瘍や外耳道癌などの治療後、または原因不明に片側の前庭機能が慢性的に低下した状態です。病歴に加え赤外線フレンツェル眼鏡での所見やカロリックテストでの反応の左右差などから診断します。一般的には片側の前庭機能が低下しても、徐々にその状態に慣れて(代償)、症状を感じることがなくなってきます。症状が慢性的に持続し日常生活に支障を来す場合は「代償不全」と考えられ、前庭リハビリテーションが有効です。

両側前庭機能障害(薬剤性・加齢性など)

薬剤やその他様々な原因で、両耳の平衡感覚を持つ部分の機能が高度に低下してしまっている場合があります。このような場合に特に暗い場所でふらつき・歩行障害をきたすことがあります。 前庭機能自体を回復させ」ることは出来ませんが、日常生活での注意やリハビリのため、ご自身の体の状態を正確に理解していただく必要があります。

聴神経腫瘍

体のバランスにかかわる神経に腫瘍が出来ることでいろいろなめまい症状を起こすことがあります。 治療としては放射線治療や手術が行われますが、定期的に経過を観察するだけでよい場合もあります。また手術を行う際にも経中頭蓋窩、経迷路、経後頭蓋窩など種々の術式があり、聴力の保存の可否などそれぞれ利点・欠点があるため、症例毎に慎重な検討が必要です。また、脳神経外科との連携も重要になります。

脊髄小脳変性症などの神経変性疾患

耳鼻咽喉科疾患ではありませんが、平衡失調・歩行障害などをきたし、中脳・小脳・脳幹の機能検査のためにも耳鼻咽喉科での精密な検査が必要となるため、おもに神経内科からの紹介により平衡機能検査を施行しています。

加齢性平衡障害(高齢者のふらつき)

厚生労働省の試算によれば、65歳以上の高齢者が人口に占める割合(高齢化率)は2015年の26.6%から、50年後の2065年には38.4%まで上昇し、人口の4割に迫ります。現在でも、高齢者に多いふらつき・転倒に伴う大腿骨頸部骨折は年間15万例に及び、それに対する医療・介護費用は3000億円を超え、また転倒そのものに伴う医療介護費用は7000億円に達すると言われています。その予防は医療経済学的にも極めて重要かつ喫緊の課題です。当科では、高齢者の「ふらつき」という症状に対する根本的なアプローチを可能にすべく、脳内での重力認知機能を評価する新たな検査法を開発し、ふらつきの改善・転倒予防やリハビリテーションに役立てる研究を行っています。