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教授あいさつ

耳鼻咽喉科 堤 剛 教授

診療について

現在、都心の大学病院はそれぞれの特色をもち、高度に専門化した医療を提供することが要求されています。一方で、東京都から一歩外へ出ると、「専門分野しか扱いません」といった医師ではとても対応できない救急医療を含めた臨床の現実があります。私たちの教室はこれまで伝統的に聴覚、平衡覚に関わる耳科学的診療を中心としてきましたが、同時に嗅覚やアレルギーを含む鼻科学、高齢者や新生児・小児疾患に加え神経・筋疾患をも対象とした摂食・嚥下障害、そして近年増えつつある睡眠時無呼吸など気道の問題や音声障害まで、幅広い領域をカバーする高度な臨床を提供できる医師を育成すべく努力しています。臨床は全人的なもので、耳鼻咽喉科内のみで完結するものではなく、神経内科、脳神経外科、形成外科、小児科、眼科、リハビリテーション部、そして世界最高レベルの歯学部附属病院を含め、関連各科と協力して診療を行っています。

そんな中、COVID-19のパンデミックにより医療業界は「感染症への備え」を常に要求されることになり、従来の診療はダウンサイジングを余儀なくされます。経営面を考えても、大学病院はその機能をより得意分野に特化せざるを得なくなります。我々の教室が日本を、そして世界をリードしていくことのできる領域としてはまず人工聴覚器手術を含む難聴診療、予防医学や内耳手術を含むめまい・平衡障害診療、そして現在全国屈指の症例数を含む外耳道癌の手術治療があげられます。これらを診療の中心に据えつつ、鼻副鼻腔や咽頭、嚥下といった領域にも対応するという難しいかじ取りを続けていく必要があります。

研究について

臨床医である耳鼻咽喉科医が研究を行うのには2つの目的があると考えています。1つは、臨床医(耳鼻咽喉科医)ならではの視点から得たテーマに基づき、この領域の将来に資する基礎的ならびに臨床的研究を行い、後世の耳鼻咽喉科医療の発展と人間の生活の質の改善に寄与することです。そして2つめは、臨床医個人として疾患をより深く理解し、患者さんへのより的確なフィードバックが可能となるよう研究を通して自らの能力を高めることです。私たちの教室では、聴覚の遺伝子・電気生理・形態にわたる一貫した基礎・臨床研究、前庭機能や重力認知機能をターゲットとした平衡神経科領域の基礎・臨床研究、ナビゲーションやVRを用いた手術支援機器開発など多岐にわたる研究を行っています。