レジデント・医員募集

有泉陽介(青梅総合病院耳鼻咽喉科科長・平成14年入局)

はじめに

私は平成14年に東京医科歯科大学を卒業し、そのまま母校の耳鼻咽喉科頭頸部外科に入局しました。当時はスーパーローテーションの制度がありませんでしたので、これを書いている平成25年現在で耳鼻咽喉科・頭頸部外科医12年目ということになります。優しい諸先輩方のご指導のもと色々なことを勉強させて頂きましたが、研修医の頃から一貫して深く関わっているのは頭頸部癌の診療です。

ここで私に与えられた命題は頭頸部外科シニアコースの紹介ですので、頭頸部腫瘍診療に関する部分に重点を置きつつ、これまでに私が経験させていただいた研修内容についてご紹介したいと思います。

入局の理由

岸本先生の学生講義に衝撃を受けて、頭頸部外科に興味を持つようになりました。あれは確か、舌癌か上顎洞癌か何かとにかく進行頭頸部癌に関する講義だったと思いますが、手術で大きく顔面の構造を摘出された写真がまず出て来ました。正直なところそれは当時学生だった私にとってかなり強烈な映像でした。「うわあ、顔面をこんなに大変な状態にしてしまって大丈夫なのだろうか…」と思わせるようなショッキングな一枚でしたが、次に出てきた再建手術後の写真はこれまた意外なほどに普通の容姿になっており、その変化の大きさにたいへん驚かされました。

これが私と頭頸部外科との出会いですが、特に大掛かりな手術のダイナミックさと、顔面・頸部という他人の目に触れる場所を扱う繊細さに、一発で魅せられてしまいました。

入局後の研修内容

1年目から2年目:大学研修医(うち3か月、土浦協同病院麻酔科)

大学研修医の同期が7人もいたので雑務が少なくて良かった反面、一人あたりの症例数が少なくなってしまったように思います。

3年目:石心会狭山病院耳鼻咽喉科

口蓋扁桃摘出、鼻内内視鏡手術、喉頭微細手術、慢性中耳炎手術など、一般耳鼻咽喉科の基本的な手術を経験することが出来ました。

4年目、5年目:埼玉県立がんセンター頭頸部外科

この病院での勤務が人生の転機だったと思います。埼玉県立がんセンターは当時、日本で3番目に症例数が多いがん専門病院でしたが、頭頸部外科スタッフは部長、副部長、常勤医1人、非常勤医2人、形成外科医1人の合計6人でその症例数をこなしていました。入院患者さんは当然全て頭頸部がん症例であり、常時40人程度だったと思います。症例が多いということは、スタッフ一人あたりの仕事量も増えるということになります。がしかし、それだけ濃厚な研修が出来るということにもなります。

当時、埼玉県立がんセンター頭頸部外科では我々の医局から2年ごとに医師を派遣(ローテーション)していましたので、2年で頭頸部外科医としての基礎が終了するカリキュラムが組まれていました。

1年目は、まずは部長や副部長の大きい手術の第2助手を数十例経験します。1年目の終盤くらいになって結紮や手術器具操作の技術がある程度成熟して来ると、今度は第一助手に格上げになり、同様に多数の手術をいわゆる「前立」として経験します。前立の手際が悪いと手術時間が伸びますので責任重大です。手術時間が伸びると1日に行うことが出来る手術の数が減ります。そうすると手術を待っている患者さんたちが治療を受けるまでの期間がどんどん伸びてしまいます。自分の手際の悪さが患者さんの生命予後に直結する訳ですので、自然と必死にトレーニングを行うことになります。

術者としての研修は喉頭微細手術による喉頭癌の生検から始まり、各自のレベルに応じて頸部リンパ節摘出、甲状腺手術、顎下腺手術、舌癌(部分切除)などを執刀する機会が与えられます。2年目になると、耳下腺手術、喉頭全摘術、頸部郭清術、下咽頭癌手術(いわゆる咽喉食摘)など、頭頸部外科の基礎的な手技と言える手術を何例も経験することが出来ます。私もこの2年間の研修のおかげでかなり自信をつけて大学に戻ることが出来ました。

6年目から10年目:大学

幸い、大学に戻っても継続的に大きい手術を執刀することが出来ました。一旦手術手技を身につけても継続的に手術をしないと技術は錆び付いてしまいますので、これは本当に有りがたかったです。

埼玉県立がんセンターでは、口腔癌(舌癌、下歯肉癌など)、中咽頭癌、上顎洞癌などの、切除時に再建手術を要するようないわゆる中級レベルの頭頸部癌手術は部長と副部長に執刀がほぼ限られていました。したがってかなりハードルの高さを感じていたのですが、大学に戻ったらこれらもどんどん指導していただけるようになり、難なく術者をこなせるようになってしまいました。その後は、副咽頭間隙腫瘍のような特殊な良性腫瘍の手術、Lefort I型骨切り術、Mandibular swing、Partial-Maxillary swingなど、岸本先生が得意とされている顔面深部へのアプローチも伝授して頂きました。また、最終的には頭頸部外科医が行う手術のうち最も高度な手術の一つと思われる、頭蓋底手術の術者も何度か経験することが出来ました。

このようなダイナミックな手術は、学生時代は単なるあこがれに過ぎませんでした。研修医時代を振り返ってみると、当時の術者は教授か講師に限られていましたので、まさか自分がこんなにすぐに執刀出来るようになるとは考えていませんでした。この頃の医局人事の関係でたまたまライバルがいなかったことなど、運が味方してくれたところもあるのですが、それにしても教授を始めとしてご指導いただいた先生がたの熱意なくしてはこれ程までに充実した研修を受けることは出来なかったのではないかと思います。大変有難いことだと思い、感謝しております。

頭頸部外科の臨床研修以外の経験

8年目、9年目:医局長 など

大学在籍中の2年間、医局長を務めました。その私が思うに、この医局の良い所は多様性です。一般的な医局では教授はお一人ですので、大抵はその教授のご専門が教室全体の方向性のようなものを決めているように思います。しかしながら、我々の医局には頭頸部外科の岸本教授、耳鼻咽喉科の喜多村教授のお二人がいらっしゃいます。それぞれがそれぞれの道の第一線で活躍されていますので、我々も折に触れて最新の知識を得ることが出来ます。色々な進路が用意されていますので、医局員の個性が大切にされている医局ということが出来ると思います。

今まで頭頸部外科のことばかり書いてきましたが、私個人としましても実際には他にも色々なことを経験させて頂きました。マウスを使った内耳の基礎研究の手ほどきを受けたこともありますし、パッチクランプ法という電気生理学の手法を学んだこともあります。また、大学在籍中は難治性耳鳴の治療法であるTinnitus Retraining Therapy: TRTの治療を担当していたこともあります。残念ながらこれらはその後中断してしまいましたが、いずれも良い経験として今に生かされていると思います。

現在の状況

11年目から:青梅市立総合病院耳鼻咽喉科の科長

昨年(平成24年4月)から青梅市立総合病院耳鼻咽喉科の科長に就任しました。当院はいわゆるがん専門病院ではありませんが、厚生労働省から「がん診療連携拠点病院」の認定を受けており、専門的ながん医療の提供を行う責務を有しております。今まで研修で培った頭頸部癌治療の能力を生かして、当科でも青梅市及び周辺地域の頭頸部癌患者さんたちの治療を積極的に行なっています。頭蓋底手術など極めて特殊な手術治療は残念ながら当院では出来ないのですが、一般的な頭頸部再建手術、放射線治療、化学療法は行なっております。

私の考える頭頸部癌研修の理想は、がんセンターの様な専門病院で大量の症例を短期間に連続的に経験し、一気に研修を進めることです。当院では残念ながらそこまでの症例数は経験出来ませんが、私の下で研修される先生方には出来る範囲で症例を経験していただき、専門病院へステップアップをするモチベーションを高めることが出来れば、と考えています。

15年目から:東京医科歯科大学頭頸部外科講師

平成28年4月から東京医科歯科大学頭頸部外科講師としてお迎えいただきました。今後は頭頸部外科領域におけるEBMの普及と新しい標準治療法の確立を目指して精進したいと考えています。

DOCTOR-ASE:医学生がこれからの医療を考えるための情報誌

EBMの実践が当たり前という文化を作りたい 【耳鼻咽喉科・頭頸部外科】有泉 陽介医師 (青梅市立総合病院)-(前編) 頭頸部 ...

ページの先頭へ