代表的な統計部腫瘍疾患と治療法


頭頸部領域の特徴は息をする、食べる、しゃべるといった大事な役割を持っていることと、衣服におおい隠されず外見に晒されていることです。また、頭頸部領域の臓器はそれぞれ異なる働きをしており、腫瘍の発生部位により多種多様な症状が出現します。したがって治療法は腫瘍の種類(組織型)のみならず、腫瘍の発生部位に応じて適切な治療法を選択する必要があります。 当院では悪性腫瘍(=がん)のみではなく、必要があれば良性腫瘍の治療も積極的に行なっております。


口腔腫瘍(舌がん、口腔底がん)

口腔とは口の中のことです。口腔がんでの中でもっとも多いのが舌がんです。危険因子は飲酒、喫煙と言われています。また、慢性的に出っ張った歯牙や義歯が当たっていることも原因の一つとされています。口内炎がなかなか治らない時(おおまかな目安は2週間)や、表面がざらざらしてきてしこりが触れるようになったときには注意が必要です。また、白板症といって、粘膜がべったりと白くなることがありますが、将来的に「がん」に変化する前がん病変であることもあり注意が必要です。

治療方法は主に手術です。大きさにより切除する範囲が変わります。当院では、初期の口腔がんに対しては小線源療法という特殊な放射線療法も行っており、有用な治療のひとつでしたが、原発事故後は小線源の供給に問題が生じて休止されています。。


鼻副鼻腔腫瘍(上顎洞がん)

鼻腔とは鼻の中の空気の通り道で、副鼻腔とは鼻腔周辺の骨に囲まれた空間のことです。鼻・副鼻腔にできた腫瘍を鼻・副鼻腔腫瘍といいます。鼻・副鼻腔の悪性腫瘍で多いのは副鼻腔の中の「上顎洞」という場所にできる上顎洞がんです。

鼻・副鼻腔は周囲が骨に覆われているため、初期には無症状のことが多いのですが、片方だけの鼻づまりや、膿や血液の混じった鼻汁が長く続いた場合には注意が必要です。また、腫瘍が大きくなると、眼球突出、複視(物が二重に見える)、頬が腫れる、歯ぐきが腫れるなどの症状が出てきます。

上顎洞がんは、放射線療法・化学療法・手術療法を組み合わせる方法(三者併用療法)で治療を行っていくのが一般的です。


上咽頭腫瘍(上咽頭がん)

上咽頭は鼻の奥のつきあたりにあり、のど(咽頭)の上部をさします。上咽頭がんは、EBウイルスというウイルスが関与して発癌する場合が多いとされています。上咽頭は鼻や耳と交通している部位であるため、鼻出血、耳閉感(耳のつまった感じ)、難聴といった症状が最初にあらわれる事が多いです。またくびのしこりで見つかることもあります。

治療の中心は抗がん剤治療と放射線を併用した化学放射線療法です。場合によっては手術療法を選択することもあります。


中咽頭腫瘍(中咽頭がん)

中咽頭は口をあけたときに見えるのどのつきあたりとその周囲をさします。中咽頭がんでは、のどの痛み、飲み込みにくさ、くびのしこり、のどの異和感などが症状としてあらわれます。場所によっては、口をあけて見るだけで腫瘍を確認できることもあります。

治療は進行の程度によって大きく異なります。早期癌であれば放射線単独療法、あるいは経口的な摘出術が行われます。進行癌の場合は抗がん剤治療と放射線を併用した化学放射線療法、あるいは手術療法が選択されます。進行癌の手術をする場合は再建手術(体のほかの部位から組織を移植すること)を同時に行うことがあります。中咽頭は嚥下機能に大きな関わりを持ち、当科ではなるべく治療後の後遺症が少なくなるよう心がけています。

また、近年は、中咽頭がんの約半数で、ヒト乳頭腫ウイルス(HPVウイルス)が関与して発癌する事が分かってきており、当科では積極的にウイルス検査を行っております。


下咽頭腫瘍(下咽頭がん)

下咽頭は食道の入り口にあたり、のどぼとけの内側にある喉頭の更に奥にあたります。下咽頭がんでは、のどの異和感、のどの痛み、飲み込みにくさ、くびのしこり、声のかすれなどの症状がおこります。

治療は早期がんの場合、当科では音声を温存する経口的な摘出術を行う事が多いですが(ホームページ内の「頭頸部表在がんについて」を参照して下さい)、場合により抗がん剤治療や放射線療法が行われる事もあります。進行がんの場合は抗がん剤治療と放射線を併用した化学放射線療法、あるいは再建手術を伴った手術療法が行われます。化学放射線療法の場合は音声を温存する事ができますが、再建手術を伴った手術療法では発声器官である喉頭を同時に摘出しなければならならず、その場合、永久気管孔とよばれる呼吸の穴がくびに開くことになり、発声ができなくなります。音声を温存する治療ができるかどうかについては、がんの進行具合や性質によって決まり、適応を慎重に決める必要があります。


喉頭腫瘍(喉頭がん)

喉頭はのどぼとけのところにあり、ここには息の通り道であると共に声を出す声帯があります。喉頭にできた腫瘍のうち、悪性のものを喉頭がんと言います。喉頭がんは中高年の男性で、喫煙者に多くみられます。

喉頭がんの初期にみられる症状は、なかなか治らない嗄声(させい:声がかれること)や血痰です。痛みはないことが多いです。声帯ポリープなどでも嗄声がみられることがありますが、ガラガラ声になるのが喉頭がんの特徴です。

喉頭がんの治療は、腫瘍が小さいときには放射線療法が中心ですが、腫瘍が大きい場合には、喉頭全摘出術といって声帯を切除する手術が必要になりますが、最近では抗がん剤治療と放射線を併用した化学放射線療法を行うことが多くなっています。喉頭全摘出術を行うと術後に声を出せなくなります。手術の後には食道発声という特殊な発声方法や電気喉頭を用いて発声するなどの方法があります。最近では、プロボックスという 人工喉頭を用いた、シャント発声法も積極的に取り入れています。


唾液腺腫瘍(耳下腺良性腫瘍、顎下腺良性腫瘍、耳下腺がん、顎下腺がん)

唾液腺には耳下腺、顎下腺、舌下腺などがあり、そこにできた腫瘍を唾液腺腫瘍と言います。唾液腺腫瘍にはさまざまな種類がありますが、良性腫瘍と悪性腫瘍に分かれます。良性腫瘍の多くは多形腺腫とワルチン腫瘍です。悪性の唾液腺がんにも様々なものがありますが、がん細胞の種類によっておとなしいがんと進行の早いがんに分かれます。診断のためには、超音波検査、CT、MRI、アイソトープ検査などの画像検査や、腫瘍を注射 針でさして細胞を採取し顕微鏡で検査する穿刺吸引細胞診が行われます。

唾液腺腫瘍の治療の中心は手術です。耳下腺の中を顔面神経が走行しているため、手術に際しては顔面神経を傷つけないような慎重な操作が必要ですが、悪性のがんの場合はがんを完全に取り除くために顔面神経も切除することが必要な場合もあります。


甲状腺腫瘍(甲状腺がん、甲状腺腺腫、腺腫様甲状腺腫)

甲状腺は身体の新陳代謝を調節するのに大切な働きをする甲状腺ホルモンを産生する臓器です。甲状腺の病気は大きく分け ると、ホルモン産生の異常に関する病気と腫瘍に分けられます。前者は当院では代謝内分泌内科が担当していて、当科では甲状腺腫瘍を扱っています。甲 状腺腫瘍は大きくなると首ののど仏の下あたりにしこりとして認められるようになります。診断のためには、血液検査や超音波検査やCTなどの画像検査、さら に穿刺吸引細胞診などが行われます。その結果をもとに、手術の必要性や手術方法を検討します。

甲状腺腫瘍の多くは良性腫瘍ですが、悪性腫瘍にも様々なものがあります。最も多いのは乳頭癌で、首のリンパ節に転移し たり、気管や食道などに浸潤することもありますが、進行が遅く10年後の生存率が90%と非常におとなしいがんです。次に多いのが濾胞がんで良性腫瘍との鑑別が難しく、手術後にはじめてがんと判明することもあります。また、肺や骨などに転移しやすいのも特徴です。未分化がんはまれですが、非常に進行が早く治りにくいがんです。


その他(副咽頭間隙腫瘍、頸部神経鞘腫、頸動脈小体腫瘍)

神経原性腫瘍は神経線維に由来するものと、神経節細胞に由来するものの2種類に大きく分類されます。良性腫瘍が多く、 一般的には増殖速度もゆっくりですが、大きくなると周囲を圧迫したりして症状がでることがあります。また、悪性であることもあるため注意が必要です。経過観察または手術が一般的ですが、手術の場合には部位・大きさによっては脳神経外科・形成外科との連携が必要になることもあります。

副咽頭間隙腫瘍とは副咽頭間隙に発生した腫瘍の総称で、耳下腺腫瘍や神経原性腫瘍など様々な腫瘍が発生します。大きく なるまで無症状のことが多いため、頭部CT/MRIで偶然発見されることもあります。深部に位置するため生検や細胞診が難しく、画像検査で精査することが 基本となります。当院では必要と判断されれば手術を行っております。

さらに具体的な頭頸部がんの説明は、「日本頭頸部学会」のホームページに「頭頸部がん情報」として掲載されていますので参考にしてください。

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