中耳炎・耳手術外来

概要

毎週水曜日の午後に中耳炎と耳手術の専門外来を開いています。
耳科学を専門とする医師により、難聴・耳だれなどの訴えのある方を対象に、(1)外来での診断と治療、(2)手術適応の決定、(3)手術施行と術後の経過観察まで一貫して行っています。
専門外来終了後に毎回担当医全員が参加して専門カンファレンスを行い、初回受診の方および難治性の方、状態に変化の見られた方などについて、治療法の選択・手術適応の決定なども含めた詳細な検討を重ねています。

特色

当施設では、2001年に日本で最初の骨固定型補聴器(BAHA:Bone-anchored hearing aid)の手術を行い、手術および術後経過観察に関する多くの経験があります。2012年から BAHAが保険適応になりました。
より低侵襲な手術をめざします。一般的な顕微鏡下手術のほか、病気の状況により内視鏡併用もしくは内視鏡下耳科手術(TEES:Transcanal Endoscopic Ear Surgery)を行っています。小さな穿孔の慢性中耳炎や耳硬化症に対するアブミ骨手術などでは、耳鏡ホルダーを用いた耳内のみの切開による低侵襲手術を行っています。

受診の流れ

初診の方はまず午前中の一般外来を受診していただきます。その後、各種聴覚検査・CT・MRIなどの必要な検査を施行し、その上で水曜午後の専門外来を受診していただいています。

診察の対象となる主な疾患

慢性中耳炎、真珠腫性中耳炎、癒着性中耳炎、鼓室硬化症など
滲出性中耳炎、好酸球性中耳炎など
耳硬化症、耳小骨奇形など
中耳炎手術後の慢性耳漏など
外耳・中耳腫瘍(グロムス腫瘍、中耳カルチノイドなど)
外耳道閉鎖症、外耳道狭窄症による難聴(BAHA手術)

代表的な疾患と治療

慢性中耳炎(慢性穿孔性中耳炎)

中耳の炎症により鼓膜の穿孔が残存し、難聴や耳だれなどをきたすものです。
慢性的な耳だれのある方には、投薬や外来処置による通院治療を行います。
手術により聴力の改善が見込まれる方には、鼓室形成術や鼓膜形成術を行います。入院期間は1週間程度ですが、術後通院が必要となります。手術時の剃毛は、ほとんど必要ありません。
比較的小さな鼓膜穿孔のみの場合には、短期入院による局所麻酔下の鼓膜形成術(接着法)も積極的に行っています。
鼓膜と内耳をつなげる耳小骨に障害がある場合には、耳介軟骨や人工耳小骨などを用いた聴力改善のための伝音再建術を行っています。
通院治療で耳だれが抑えられない場合なども、手術による治療が効果をあげています。


真珠腫性中耳炎

鼓膜の一部が中耳方向に陥凹し悪化していくと、鼓膜は皮膚であるため陥凹部に垢がたまります。(後天性)真珠腫性中耳炎では、陥凹して皮膚とともに垢がかたまりを作って周囲の骨を壊しながら大きくなります。
お母さんのお腹の中にいるときに、将来皮膚になる組織が中耳に迷入・遺残して発生する先天的な真珠腫性中耳炎(先天性真珠腫)もあります。
真珠腫性中耳炎では難聴や耳だれが生じます。しかし、真珠腫がある程度大きくなっても、難聴が軽度の場合があります。
外来処置でコントロールできる場合は、通院治療による定期的な処置を行います。しかし、多くの患者さんでは、手術が必要となります。
原則として1回で手術を終わらせますが、子どもなどでは半年から1年後に再発の有無を確認する点検手術を行うことがあります。
入院期間は通常1週間程度ですが、術後通院が必要となります。
進展すると、内耳の半規管を破壊し、めまいや高度の難聴になることがあります。まれに、顔面神経麻痺、脳膿ようなどの頭の中の重篤な感染症が生じることがあります。そのため、できるだけ早めの発見・治療が必要となり、症状が軽くても放置せず受診していただくようお願いいたします。


滲出性中耳炎

中耳に滲出液がたまって難聴をきたす中耳炎です。子どもに多い疾患ですが、感冒後に生じることがあり、痛みがないため症状を訴えないことがあります。そのため、お子さんに難聴が疑われた場合には、受診していただくようお願いいたします。
口蓋裂のお子さんには高率に合併するため、必ず耳鼻咽喉科診療を受けていただく必要があります。放置しますと難聴のため、ことばの習得に影響が出ることがあります。
大人に発症した場合は、上咽頭がんが原因であることがあるため、チェックが必要となります。
薬物の内服のみで治癒する場合もありますが、治癒しない場合は鼓膜切開を行い中耳の滲出液を排出させることがあります。
難治性の場合は、鼓膜換気チューブを挿入します。お子さんでは、入院による全身麻酔下の鼓膜換気チューブ留置術が必要となることがあります。チューブは自然に脱落することもありますが、自然脱落しない場合は通常1〜2年で抜去します。再発の場合には、改めて鼓膜換気チューブを挿入します。


耳硬化症

中耳には、鼓膜から音を内耳へ伝える3つの耳小骨(ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨)が存在します。耳硬化症は、アブミ骨の動きが悪くなり難聴が徐々に進行する原因不明の病気です。片耳に生じる方と両耳に生じる方がいます。
手術ではアブミ骨手術を行いますが、人工耳小骨(テフロンピストン)を用います。手術により、ほとんどの方で聴力は劇的に改善します。
当施設では、原則として耳周囲を切開せずに耳内からのアプローチにて手術を行っています。また、レーザー(KTP、炭酸ガス)を用いて、安全性を高めています。
生まれたときからアブミ骨の動きが悪い先天性アブミ骨固着症でも、同じ術式で手術を行います 。


外傷性鼓膜穿孔

耳かきやマッチ棒などの直接的な外力や平手打ちやボールが耳にあたるなどの間接的な外力により鼓膜が損傷されることがあり、外傷性鼓膜穿孔といいます。
症状として難聴をきたしますが、内耳が損傷されるとめまいが起こります。
鼓膜穿孔は自然に閉鎖する場合も多く、しばらくは外来通院をしていただきます。
半年程度経過しても穿孔が閉鎖しない場合や耳小骨離断がある場合には、鼓室形成術(鼓膜形成術)を施行します。

耳かきによる右外傷性鼓膜穿孔


好酸球性中耳炎

好酸球性中耳炎は、滲出性中耳炎と同様に中耳内に液体が貯留し難聴が生じるものです。滲出性中耳炎と異なるのは、中耳内の貯留液が非常に粘稠(にかわ状)であり、顕微鏡下に観察すると好酸球と呼ばれるアレルギーに関与する白血球が多く含まれていることです。
内耳の障害により、突然めまいを生じることや耳が全く聞こえなくなることがあります。
気管支喘息やアレルギーが関与する副鼻腔炎をお持ちの方に生じることがあります。
アレルギー性肉芽腫性血管炎(チャーグ・ストラウス症候群)という全身性の病気に、同様の中耳炎が起こることがあります。
治療には鼓膜換気チューブの挿入、抗アレルギー薬、ステロイド剤などが用いられます。

チャーグ・ストラウス症候群にみられた中耳炎


グロムス腫瘍

グロムス腫瘍は、中耳内の舌咽神経や迷走神経の枝から発生する鼓室型と頸静脈球から発生する頸静脈球型があります。
血流が豊富な腫瘍で、最も多い症状は拍動性の耳鳴りです。その他、耳痛、耳出血や顔面神経麻痺が生じることがあります。
治療では、手術的に摘出します。

鼓質型グロムス腫瘍


中耳カルチノイド

カルチノイドは、神経内分泌細胞から発生する腫瘍で、多くは消化管・肺・気管支に発生します。
中耳に生じたカルチノイドの症状は、難聴、耳痛、耳閉感、耳漏であり、顔面神経麻痺が起こることもあります。動悸・浮腫・顔面紅潮などのカルチノイド症候群の症状を示すことはまれです。
治療の原則は、手術による腫瘍摘出です。まれに、遠隔転移をきたすことがあるため、術後も注意深く経過をみていく必要があります。

中耳カルチノイド


骨固定型補聴器(BAHA)

BAHAはチタン性のインプラントを耳の後ろの骨に埋め込み、体外部のサウンドプロセッサーから直接骨に振動を伝える骨導補聴器です。
欧米では現在までに約30,000例の方が手術を受けていますが、日本では当施設にて最初に行われ、現在は保険適応がなされています。
保険適応となる疾患は、両側の外耳道閉鎖症、持続性の耳だれ、耳科手術や気導補聴器で十分な補聴効果が得られない方などです。
当施設では、局所麻酔下で手術を行っており、入院期間は通常3-4日です。

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