耳鼻咽喉科 教授挨拶

ご挨拶

耳鼻咽喉科 教授 堤  剛

 私たち東京医科歯科大学耳鼻咽喉科学教室は、お茶の水・湯島という交通ならびに文化の要衝の地で、高度で安全な医療の提供、優れた臨床医の教育、先駆的かつ臨床に根ざした研究を行うべく日々力を合わせ努力しております。

 東京医科歯科大学耳鼻咽喉科は昭和19年に堀口伸作初代教授により開講され、創設以来既に60余年を数えます。渡邉勈教授、小松崎篤教授を経て、平成11年4月、先代喜多村健教授就任の折には、耳鼻咽喉科と併設される形で頭頸部外科学教室が開講され、岸本誠司初代教授が同時に就任されました。以降、耳鼻咽喉科と頭頸部外科の2つの教室が共同で運営されています。平成27年4月から耳鼻咽喉科学教室は堤剛が5代目教授として担当させていただいており、同時期に頭頸部外科学教室に就任された朝蔭孝宏教授とともに教室運営を行っています。

 以下に私たちの教室について、概略を俯瞰して説明させていただきます。

耳鼻咽喉科について
 耳鼻咽喉科は頸から頭蓋底までの範囲を診療対象とし、その中には聴覚、平衡覚、味覚、嗅覚、そして一部視覚と重要な感覚器が含まれます。さらに顔面の知覚も含めると、人間の全ての感覚入力を診療の対象とすることになります。これら人間の5感(平衡覚を入れると6感です)の障害は、私たちの生活に極めて重大な影響を及ぼします。また、私たちの日常生活における運動機能を考えるとき、言葉を話す、食べる・飲む、バランスを取って歩く・運動するなど、極めて重要な動作の管理、調節が耳鼻咽喉科医の手にゆだねられています。診療および研究の対象はあらゆる年代に及び、新生児から高齢者まで全ての世代の生活の質を高めることが我々耳鼻咽喉科医に対して要求されています。

臨床について
 現在、都心の大学病院はそれぞれの特色をもち、高度に専門化した医療を提供することが要求されています。一方で、東京都から一歩外へ出ると、「専門分野しか扱いません」といった医師ではとても対応できない救急医療を含めた臨床の現実があります。私たちの教室はこれまで伝統的に聴覚、平衡覚に関わる耳科学的診療を中心としてきましたが、同時に嗅覚やアレルギーを含む鼻科学、高齢者や新生児・小児疾患に加え頭頸部腫瘍術後や神経・筋疾患をも対象とした摂食・嚥下障害、そして近年増えつつある睡眠時無呼吸など気道の問題まで、幅広い領域をカバーする高度な臨床を提供すべく日々努力しています。悪性腫瘍は頭頸部外科にお任せする形となりますが、医局員は共通であり、また耳の腫瘍などの症例もあり、共同で診療にあたっています。臨床は全人的なもので、耳鼻咽喉科内のみで完結するものではなく、神経内科、脳神経外科、小児科、眼科、リハビリテーション部、そして国内最大規模の歯学部附属病院を含め、関連各科と協力して有機的に結合した診療を行っています。

研究について
 臨床医である耳鼻咽喉科医が研究を行うのには2つの目的があると考えています。1つは、臨床医(耳鼻咽喉科医)ならではの視点から得たテーマに基づき、この領域の将来に資する基礎的ならびに臨床的研究を行い、後世の耳鼻咽喉科医療の発展と人間の生活の質の改善に寄与することです。そして2つめは、臨床医個人として疾患をより深く理解し、患者さんへのより的確なフィードバックが可能となるよう研究を通して自らの能力を高めることです。私たちの教室では、聴覚の遺伝子・電気生理・形態にわたる一貫した基礎研究、工学系大学とタイアップした平衡神経科領域の基礎・臨床研究、鼻科学・アレルギー領域の基礎研究、睡眠時無呼吸症候群に関わる臨床研究など多岐にわたる研究を、それぞれの医局員が自らの興味に従って行っています。海外への研究留学についてはこれまでNIHやハーバード大学へ多くの先生が留学しており、今後さらに同門会の先生のご協力の下Vanderbilt大学も留学・共同研究先として加わる予定です。

教育について
 大学医学部、大学病院の最も大きな責務は教育です。医学生・臨床医だけでなく、臨床検査技師や看護師も含め、優れた医療者を教育し世に送り出してくことが、私たちが最も注力すべきことであると考えます。現在の医学教育は大きな過渡期にさしかかっています(いつもそう言われている気はしますが)。枝葉の知識だけではなく、解剖および生理学的な基礎から一般臨床まで、一貫した理解のできる医療者を育てるべく、大学と各診療科が協力して教育カリキュラムを構成しています。学生だけでなく臨床医となり教室に所属した後も、目の前の事象がベースとなる解剖・生理学的知識の上で理解できるよう、常に基礎的なメカニズムの理解に立ち返った教育を心がけています。また、臨床についての項で少し書きましたが、単一の専門領域に特化しすぎず、まずオールラウンドに診療を行えるようになった上で、その後サブスペシャリティを獲得していくようにしいています。

耳鼻咽喉科医を取り巻く社会状況について
 全国30万人弱の医師のうち耳鼻咽喉科医は現在9000人弱で、絶対数の不足が深刻です。今後高齢化が進むにつれて、感覚器を扱う耳鼻咽喉科医の需要は加速度的に高まっていきます。大学病院で先進的医療を担う人材だけでなく、基幹病院で医療を支えていく人材、さらに地域の診療所などで多岐にわたる患者さんのケアをしていく人材、この全てが今求められています。

最後に、私たちの教室の雰囲気、方向性について
 臨床・研究に熱く取り組む人材が豊富ながらも、どこかほのぼのとした雰囲気の流れる教室です。何がこの雰囲気を形作っているのか定かではありませんが、伝統とはそういったものでしょうか。そして、教室員皆が非常に教育熱心です。多数ある関連病院も含めアクティビティが高く、個人のいろいろな希望に即したキャリア形成が可能です。また、同門会の先生方も教室の若手の教育に積極的に関わってくれています。男女比は、近年女性医師の増加に伴い、入局者の約半数を女性が占めるようになりました。先駆的な診療や研究に携わりたい人、地域医療を基幹病院で支えていきたい人、患者さんに密着したケアに携わりたい人、自分の生活も大切にしたい人、いろいろな希望に添える選択肢が用意されています。

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